撮影・文
岡崎武志
本棚の収容力には意外に限界があり、あとの蔵書は床や通路に積むことになる。壁と段差を持つ階段はじつに便利な本の置き場で、地下1階地上2階の我が家の階段は積み放題だ。火事の際はどうする、という弱気を持つ蔵書家はいないだろう。燃えてしまえばさばさばする、ぐらいの度量がなくて、本を集めることなどできない。数万冊の蔵書を前に「何冊ある? 何冊ぐらい読んだか?」は「積ん読」人に対する愚問中の愚問である。
岡崎武志
おかざき・たけし 1957年大阪府生まれ。立命館大学卒業後、高校の国語講師を経て上京。出版社勤務の後、フリーライターとなる。書評を中心に各紙誌に執筆。「文庫王」「均一小僧」「神保町ライター」などの異名でも知られる。著書に『ここが私の東京』『上京する文學』『古本で見る昭和の生活』『女子の古本屋』(ちくま文庫)、『憧れの住む東京へ』(本の雑誌社)、『人生の腕前』『読書の腕前』 (光文社)、『ドク・ホリディが暗誦するハムレット』(春陽堂書店)、『昨日も今日も古本さんぽ』、(盛林堂書房)、編書に『愛についてのデッサン 野呂邦暢作品集』『野呂邦暢 古本屋写真集』(ちくま文庫)など多数。