orで繋ぐ星
多宇加世
ころがった かたつむり
硬い殻の蓋少しだけ開け 雨を飲んでる
猫が特に鳴く夜はバナナを食べようか
眠れない? ならばお風呂を洗おうよ
それから あなたの顎はゆっくりと咀嚼して
ディスプレイで花火を観ていた
歯も見せずに
転がった かたつむり
いつか踏み潰される この部屋のよう
観覧車を背に 写真は私が撮った
風が強かったから髪を何度も整えていた
嬉しかった? あなたは訊いた
「もちろんきっと! まだ脚が震えてるもん」
それから 天国の
紙の値段は高騰していった
燃やすことのほうが多いのに
転がった かたつむり
たぶん火傷の皮を仕舞う缶と同じで
泣いていたら大人になっていた
笑っていたら猫はまだ生きていたのかな
家と家のあいだを子供の私が走り抜けていく
あの手の跡はまだきっと冷たいガラス窓に
粘土質が渇く川、可愛く会話する
言うことすべて滑り出す
ギャグってことじゃなく
転がった かたつむり
orで繋ぐ星いくつかそれは決まっている?
同じ鳥を見る
同じ雲を見る
運動する心臓の右側を跨ぐ私の長い髪
顔の前で手を振る 夜中それは見えず
また悪さしてきたら
また泣いているあなたの頬に経血が付く
多宇加世
たう・かよ 詩人。山形県生まれ。『さびていしょうるの喃語』(私家版)、『山越え』(しろねこ社)、詩の絵本『夜にてマフラーを持っていく月が』(双子のライオン堂出版部)など。『増補版 町合わせ』(百匹ブックス)が四月に発売予定。
カプセルトイを1か月に2回位する。最近やったのは動物が椅子になっているやつ。