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草木を訪ねて三千里 13——おもしろい形と名前[上]◎藤井義晴

文・写真
藤井義晴(東京農工大学名誉教授)

 日本には世界の人がびっくりするおもしろい形をした植物があります。

 タコノアシは、秋に全草が紅葉し、赤い実がゆで蛸のように見えるので蛸の足。似た植物がないのでタコノアシ科として独立しました。水辺や水田によく生えていましたが、環境の変化で激減しています。

タコノアシ(蛸の足) タコノアシ科という珍しい科に属する日本在来種。準絶滅危惧種

 ヤブレガサは葉が破れた笠のようですが、葉は40センチにもなるので、山菜として食べごたえがあり、4~6月に採取します。

ヤブレガサ(破れ傘) 葉はやぶれた傘のように見える。キク科の日本在来種。雑木林の下に生える

 イカリソウの中国名は淫羊霍。茎葉に媚薬の効果があり、作用成分イカリインが同定されています。名前の由来は「怒り」ではなく、花が船の「錨」に似ているためです。

イカリソウ(錨草) 雑木林に生えるメギ科の多年草。日本在来種

 ヒョウタンボクの実は瓢箪そっくりです。赤くておいしそうですが、毒があり食べられません。成分は研究されていません。キンギンボクというきれいな別名もあります。

 ヒョウタンボク(瓢箪木) 日本在来のスイカズラ科の低木。赤い実が瓢箪に似ている
ヒョウタンボクの別名はキンギンボク(金銀木)。花が白から黄色に変わり、両者が共存しているときは金銀のようだという意味

 リュウキュウハナイカダは葉の上に花が咲くので驚きます。花や顎や雄しべなどは葉から進化したので、そのなごりなのです。

リュウキュウハナイカダ(琉球花筏) ハナイカダ科。葉の上に咲く花を、花が筏の上に乗っていると見立てた

 日本は南北2800キロに及び亜寒帯から亜熱帯まで4つの気候帯があるので生物多様性に富み、珍しい植物がたくさんある楽しい国です。

藤井義晴

ふじい・よしはる 著書に『アレロパシー』『植物たちの静かな戦い』『ヘンな名前の植物』など。

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