上ヶ島オサム
石鹸の包み紙
ヨーロッパの書物に石鹸が登場したのは、1世紀ローマの博物学者・政治家プリニウスの『博物誌』が最初だという。同書の「sapo」という記述は、石鹸の言葉の起源とガリア地方(フランス、ベルギー、北イタリア一帯)起源説の裏づけになっている。日本では、慶長元(1596)年の石田三成の書状に「シャボン」の記述が確認され、後に長崎からもたらされた明国の『本草綱目』を通じて「石鹸」の言葉が渡来した。
石鹸製造は、明治時代に家内工業規模から出発し、大正期に発展した硬化油脂工業が廉価な石鹸の大量製造をもたらした。戦国大名が手にしたシャボンは長い歳月をかけて家庭の必需品になり、メーカーは包み紙に美を競った。
〔参考文献〕日本油脂工業会編『油脂工業史』(日本油脂工業会)、J・ベックマン著・特許庁内技術史研究会訳『西洋事物起原』(岩波文庫)
上ヶ島オサム
かみがしま・おさむ 紙物収集家。1957年北海道生まれ、東海大学工学部卒。著書に『レトロ包装シール・コレクション』(グラフィック社)などがある。